投資信託クリニック代表であるカン・チュンドさんの著書「つみたて投資の終わり方」を読みました。
「つみたて投資の終わり方」とは
定年後に、今まで積み立ててきた投資信託を取り崩す方法が紹介されている本です。
リタイア前の5年間ですべきこととして、投資のリスク量を落とす方法、リスク資産の中身をスリム化する方法、投資信託の解約の練習をする必要性も書かれています。
筆者が伝えたいメッセージ
リタイアメントという穏やかな時間の中でやるべきとこはシンプルです。
・年末に総資産額を算出します(取り崩し額を決定)
・年始にリ・バランスを兼ねて取り崩しを実行します
これだけです。
人生後半の「黄金時間」の中で、投資にかける時間は上記のみとしましょう。
「つみたて投資の終わり方」が謳うリタイア後の資産管理
- 老後にふさわしい安全資産:リスク資産の「比率」を決定
- 年に一度のその比率を復元する(リ・バランスといいます)
- 2を実施しながら年に一度「定率」で全資産から取崩しを行う
「つみたて投資の終わり方」から学んだこと
リタイア前のラスト5年を準備期間に
準備期間(5年)の中で、少しずつマイルドな資産配分に移行させよう。
- リスク資産の割合を下げる(安全資産の割合を増やす)
- より保守的なファンドに乗り換える
- 1と2を併用する
- リスク資産の中身をスリム化する
- 投資信託の解約の練習をする
①リスク資産の割合を下げる(安全資産の割合を増やす)
(例)
安全資産(預金):リスク資産(株式ファンド)=2:8を
↓
安全資産(預金):リスク資産(株式ファンド)=4:6に移行
②より保守的なファンドに乗り換える
(例)
安全資産(預金):リスク資産(全世界株式ファンド)=3:7を
↓
安全資産(預金):リスク資産(債券50:株式50のバランスファンド)=3:7に移行
より保守なファンドに乗り換えることで、同じ3:7の比率でも、リスク量を下げることができる。
③ ①と②を併用する
(例)
安全資産(預金):リスク資産(全世界株式ファンド)=3:7を
↓
安全資産(預金):リスク資産(債券50:株式50のバランスファンド)=5:5に移行
④リスク資産の中身をスリム化する
リスク資産のスリム化とは、複数のファンドの組み合わせから、広範囲な投資対象と捉えるインデックスファンド(1本)に資産を集約すること。
リスク資産をスリム化すれば、資産の管理と取崩しのオペレーションを簡素化できる。
全世界インデックスファンドは、たった1本で「世界株」全体への投資を可能にする。
(例)
安全資産(預金):リスク資産(日本株ファンド+先進国株ファンド;新興国株ファンド)=3:7を
↓
安全資産(預金):リスク資産(オール・カントリー)=3:7に移行
⑤投資信託の解約の練習をする
投資の「構え」を転換するきっかけになるのが、ファンドの任意解約。
リタイア前の準備期間を利用して、投資信託を売却してみよう。
(例)
- 子どもの大学院の入学金の一部
- 自宅の給湯器の取り換え
- ソファの買い替え
- 北海道家族旅行
年に1回全資産(安全資産+リスク資産)を定率で取り崩す
- 年末に総資産額を算出。取り崩し額を決定。
- 年初に取り崩しを実施(リ・バランスを兼ねて)
(例)
- 預金(2000万円):オール・カントリー(2000万円)=50%:50%
- 総資産からの取り崩し率を3%とする。
<1年目>
4000万円 × 3% = 120万円
4000万円 - 120万円 = 3880万円。
預金とオール・カントリーが同じ比率のため、預金から60万円引き出し、ファンドを60万円解約する。
年初に取り崩したお金は、120万円÷12カ月のイメージで1年かけて使用していく。
取崩し後の資産状況は、
(4000万円 - 120万円) ÷ 2 = 1940万円
- 預金(1940万円):オール・カントリー(1940万円)となる。
<2年目>
ファンド価格が上昇し、預金(1940万円):オール・カントリー(2095万円)。総資産額は4035万円に増えた。
4035万円 × 3% = 121万円
(4035万円 - 121万円) ÷ 2 = 1957万円
ファンドを138万円解約し、預金に17万円預け入れる。
- 預金(1957万円):オール・カントリー(1957万円)となる。
<3年目>
ファンド価格が下落し、預金(1957万円):オールカントリー(1742万円)。総資産額は3699万円に減った。
3699万円 × 3% = 111万円
(3699万円 - 111万円) ÷ 2 = 1794万円
預金から163万円引き出し、ファンドを52万円買う。
- 預金(1794万円):オール・カントリー(1794万円)となる。
おすすめのポートフォリオ「4つのパターン」
- 安全:リスク=50%(預金):50%(eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー))
- 安全:リスク=40%(預金):60%(楽天・インデックス・バランス・ファンド(株式重視型))
- 安全:リスク=35%(預金):65%(eMAXIS Slim バランス(8資産均等型))
- 安全:リスク=30%(預金):70%(楽天・インデックス・バランス・ファンド(均等型))
4つのパターンすべての期待リターンは3%程度です。
「つみたて投資の終わり方」を読んで
投資のリスク量を落とす、リスク資産の中身をスリム化するというのは、つみたてNISAをしている人にとっては、すでに取り組むべき課題であると思いました。
山崎元さんが「【全面改訂 第3版】ほったらかし投資術」でもすすめられている「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」1本に、つみたてNISAで積立投資することで、シンプルな投資をすることができると思います。
カウチポテトポートフォリオを目指したいと思っていたので、筆者がオススメしている「安全:リスク=50%(預金):50%(eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー))」はとても魅力的に感じました。
リスク資産が減った年は投資信託を温存し、主に預金から取り崩す。リスク資産が増えた年は預金を温存し、主に投資信託から切り崩す。このような柔軟性を持つことが、資産を長持ちさせる秘訣のようです。
積立投資の終わらせ方として、とても参考になる本でした。本書に興味をお持ちになった方は、是非一度読まれてください。