経済評論家・ジャーナリストである佐藤治彦さんの著書「年収300万~700万円 普通の人が老後まで安心して暮らすためのお金の話」を読んでみました。
『年収300万~700万円 普通の人が老後まで安心して暮らすためのお金の話』とは
収入と支出の足し算・引き算で人生に必要なお金のことを考える本ではなく、人生とお金の関係について新しいアイデアや材料を提供して、読者自身に考えてもらうための本であり、思い切り人生を楽しみ、お金といい距離を保つための本です。
筆者の伝えたいメッセージ
若いときも楽しんで、老後もどうするかということを考えなくちゃ仕方ない
普通の人が老後まで安心して暮らすために
脱・節約教のススメ
お金のことを家族と話す
老後に手元にあるお金は、若いころからの人生全般にわたって積み重ねたものの結果なので、若い時代からのお金とのつき合い方や生き方がとても大切。
誰かがガマンしているという状況を作らないために、家族全員(特に夫婦)での価値観の共有が重要。
夫婦がいい関係であまり無理をせず2000万円の老後資金を準備した夫婦と、家庭内離婚状態だけれども3000万円ある夫婦では、前者の方が老後を生き抜く力がある。
老後になったら、使える予算内でどう生活できるか考えてみる
年金や退職金など、将来もらえる予定のお金は、あくまでも予定でしかない。
生活に関するお金のことは次の式が成立していればいい。
実際の老後生活にかかるお金 < 実際の老後に使えるお金
老後の生活資金を無理に節約して大きくするのではなく、現役時代と同じように、老後の生活予算の範囲内でライフスタイルを柔軟に変化させていけばいい。
禁・資産運用
老後に必要なものは、現役時代にも必要なもの(健康・趣味・人間関係)
健康は、楽しく経済的に、豊かに老後を過ごしていく大きな土台になる。
そして、高齢になってから気をつけるよりも、若いころからケアをしているほうが、老後も健康で過ごせる確率が高くなる。
人間関係は心のよりどころになる。
人間関係は家族がもっとも大切だが、家族以外にも広く人間関係のネットワークを築いておくことがとても大切。
一生を通して愛したり打ち込める趣味を持つことができるのは幸せ。
健康、人間関係(家族も含む)、趣味、生き甲斐も、老後になってから慌てて始めても間に合わない。若いうちからじっくりと時間をかけて、時にはお金も使いながらつくり上げていくもの。
老後のお金の「一部の心配」は老後になってからでも遅くない
公的年金や自己資金だけでは、生活費が少し足りない場合、老後になっても収入を増やすこと、もしくは支出を減らすことを考えればいい。
もしも老人になってお金に困ることになりそうだと思ったら、働けばいい。
ただ働く意欲があっても、高齢者が就職できるかどうかの第一ポイントは健康。
若いときから健康に留意した生活を送ることが大切。
また、適応力も必要なので、現役時代からいろんな人と付き合って、人間関係をつくることをおっくうに思わないような人であれば大丈夫。
株式や投資信託、外国債券などの元本割れリスクのあるもので手持ちのお金を増やしなさいとは言わない。
老後の生活に必要な資金を元手にギャンブルするのと同じこと。
失敗すれば老後の生活水準が大きく下がる可能性のあることを自覚してほしい。
インフレ懸念をどう考えるか
老後の資金は、原則は定期預金に貯蓄しておけば十分という考えが基本としても、インフレは気になる。
だからといって、分かりもしないリスク性商品に投資をして、元本をさらに少なくしてしまったら深手を負ってしまうことも間違いない。
インフレ対策として金融資産の一部で株式インデックスに連動する投資信託(=日経平均やTOPIXなどに連動するもの)を購入したり、長期的に運用する資金なら、10年物の個人向け国債(金利変動タイプ)を購入するのもいいかも。
この個人向け国債は、市場金利に合わせて半年ごとに金利も上下する。
インフレを考慮して資産の一部を日経平均のようなインデックスなどで運用する場合、できるだけ市場が歪んで安いときに始めるのがオススメ。
資産の一部は年齢、経済状況などによるが、筆者は資産の1/3までと考える。
新・消費宣言
節約にさようなら 欲望よ、こんにちは
要らないもの、欲しくないものは買わない。
そのためには自分が要るもの、欲しいものを知っておく必要がある。
1万円の洋服を気に行って100回着たら、1回につき100円だが、バーゲンで5000円の洋服を5回だけしか着なかったら、1回1000円。
筆者か愛用している腕時計はロレックスのサブマリーナという永遠の定番商品で、30年以上前に20万円で購入。
気に入っていつもこればかり使っており、しかも今買うと30万円以上するので、お金に困ったらブランド品の中古屋で15万円で売れる。
モノもサービスも、買ったときに高い安いと思うものだが、本当に高かったのか安かったのかということは後になって決まる。
その商品をどれだけ愛し、使ったか。
安い買い物をするためには値段ではなく、自分が本当に欲しいものは何なのか、それが本当に好きなものなのか、自分の気持ちや欲望と徹底的に向き合い、本当に欲しくなければ買わない。
人間関係は継続が大切。交際費には無駄を惜しまない
友人知人の関係は、何をしてくれるわけではないが、心の中の灯になることがある。
でも、齢を重ねてから、必要と思ったとしてもすぐには難しく、健康と同じで、若いころから時間をかけてじっくり熟成していくもの。
知識の泉へようこそ
生命保険 いざというときをもっとリアルに想像しよう
生命保険はいざというときに自分の蓄えだけでは困るから入るもの。
民間の保険にいざというときを心配してお金を託すよりも、まずは100万円、いや、500万円、1000万円の貯蓄をつくってしまおう。
そうすれば、別に保険会社の世話にならなくても、公的な社会保険と自分の蓄えで何とかなる。
保険に入らないメリットも考えてみよう
まだ若く健康にもそこそこ自信があるのなら、あえて保険に入らないというチョイスもある。
今まで以上に健康に留意し、事故に遭わないように細心の注意をする。
タバコをやめ、酒の量を減らし、運動のための時間を取って、食べるものも注意する。
生活習慣病の予防を考え、体重管理をし、病気をできるだけ早く発見するために人間ドックや健康診断に頻繁に通う。
終身タイプの医療保険で保障は一生、保険料も一生上がりませんって一生安心なのか
1回の入院で何日まで入院給付金が支払われるか、通算で入院日数が何日分まで支払われるかに注意。
契約は一生続いたとしても、入院は最大何日と決められており、それを超えると、保障は終わる。
また、「1回の入院」という定義も大切で、同じ病気での再入院の場合には1回の入院とする場合が多くある。
お互いの自立・老後のために教育費を親子で負担する
早ければ中学、遅くとも高校生くらいからは、家計を明らかにし、どのような経済状況になっているかを共有して、家庭を支える協力を求めるべき。
例えば、子どもが大学進学を希望しているのであれば、高校入学時に家計のことを子どもが理解できるようにじっくり話し、高校卒業までは経済的な面倒を見ても、その後は自分の力で進んでもらいたいと伝えることはいけないことだろうか。
学費を算段する方法はいくらでもあることを話そう。
例えば、奨学金やアルバイト、必要であれば自らの老後の資金と考えているお金を貸すというかたちでも構わない。
親子といえども、借用書をかわし、卒業後には返してもらう約束をする。
ザ・住宅問題
買ったほうがいい?という質問はナンセンス
極論すると「新しいマクドナルドのメニューは食べたほうがいいですか?やめておいたほうがいいですか?」と同じくらいナンセンスな質問。
筆者が住宅を買うべきかという質問に長年答えてきたのは、「買いたければ買えばいいじゃないでしょうか」
でも、もしも買うかどうかで悩んでいるなら、慎重になったほうがいい。
マイホームに関する筆者の考え
何十年ものローンを組むということは、今後の収入がどうなろうが、今後何十年もの間、毎月一定額のお金を返済しなくてはいけないことをきめてしまうこと。
持ち家を買って最初の数年はいいが、家族の思いはその後30年や40年にわたって同じままだろうか。
賃貸なら、家族構成に合わせて住み替えることが可能。
自宅以外で亡くなる人が大多数で、終の住処も自分では決められないという現実がある。
マイホームはなくても、いつでも介護施設等の入居費用として使えるお金があった方が健康状態に応じて対応できる。
賃貸の家賃は収入の3割程度という基準を耳にするが、周辺環境で得するのであれば、そのかぎりではない。
どうしても買いたいなら、マンションは築浅の中古がおすすめ。
マンションの管理状態や近隣住民がどんな人かわかるから。
『年収300万~700万円 普通の人が老後まで安心して暮らすためのお金の話』を読んで
節約とガマンで人生を塗りつぶさず、人生をとことん楽しむために、自分が”本当に”欲しいものをつきつめるという考え方は、『フランス人は10着しか服を持たない』で学んだ考え方に通じるものがあると思います。
家族と人生の価値観を共有し、人間関係や趣味も楽しみつつ、老後資金を貯めていきたいと思います。