【読書感想・書評】やる気が上がる8つのスイッチ

社会心理学者で、コロンビア大学モチベーション・サイエンス・センター副所長であるハイディ・グラント・ハルバーソンさんの著書「やる気が上がる8つのスイッチ」を読みました。

「やる気が上がる8つのスイッチ」とは

読者が「人間をやる気にさせるお医者さん=モチベーション・ドクター」になりための最初の一歩になるように書かれた本です。

本書では、3つの軸(マインドセット、フォーカス、自信の有無)を使って、人間を8タイプに分けています。

  1. 中二病(証明マインドセット/獲得フォーカス/自信なし)
  2. うざいやつ(証明マインドセット/獲得フォーカス/自信あり)
  3. 臆病者(証明マインドセット/回避フォーカス/自信なし)
  4. 退屈な人(証明マインドセット/回避フォーカス/自信あり)
  5. やる気の空回り(成長マインドセット/獲得フォーカス/自信なし)
  6. まじめな見習い(成長マインドセット/回避フォーカス/自信なし)
  7. 新生(成長マインドセット/獲得フォーカス/自信あり)
  8. 熟練の匠(成長マインドセット/回避フォーカス/自信なし)

「やる気が上がる8つのスイッチ」から学んだこと

マインドセット

マインドセットとは、考え方の癖、あるいは思考傾向のことです。

私たちは「証明マインドセット」と「成長マインドセット」のどちらかを持っています。

ただし、それは固定的なものではなく、だれでも変えられるもの。

「成長マインドセット」を持つことが有利に働く。

証明マインドセットを持っている人
  • すごい人と思われたい
  • 人に自分の能力を見せつけ認めさせようとしている
  • 自分と他人をいつもくらべている
  • 助けを求めるということもあまりやりたがらない
  • ミスをすることをいつも恐れている
  • 自分にはできないということが人にも自分にもわかってしまうことが怖い
  • 困難にぶつかったとき、不安に押しつぶされてしまうか、あきらめてしまう
  • 課題や目標にとらわれすぎていて、そこに至るまでの道筋やプロセスを楽しむ余裕がない
成長マインドセットを持っている人
  • すごい人になりたい
  • 他人の目をあまり気にしない
  • 他人が自分をたとえ認めてくれなくても、やると思ったことはやる
  • 比較対象は他人というよりも自分自身
  • 困難に直面した時も粘り強く頑張り続ける
  • 時間をかけて成長していくということが大切であり、その道程で失敗は仕方ないし、困難だって当然あるだろうと考えられる

やる気のフォーカス

「獲得フォーカス」か「回避フォーカス」かを知って強みにしよう。

最良のパートナーシップとは、獲得と回避の2つのフォーカスをバランスよく持つということ。

自分と相手のフォーカスを理解して、それぞれが最高の力を発揮できるようにしていくことこそが、最も大切なこと。

獲得フォーカス
  • 高いレベルの仕事とは、達成であり獲得だと考える
  • 称賛を得ることに動機づけられる
  • その情熱は肯定的なフィードバックやうまくいったという確信や称賛によりさらに高められる
  • 自分の能力に疑問を持つようになると途端に調子が出なくなる面もある
  • 進んであらゆるチャンスに賭けていき、たとえそれが一か八かの賭けであってもそれに乗ろうとする
  • 多くのことに手を出しがち
  • 仕事を先延ばしにしがち
  • 実験的かつ抽象的に考えるのが得意
  • スピードと正確さでは、スピードを尊ぶ
回避フォーカス
  • 高いレベルの仕事とは、安定感であり信頼性であると考える
  • 危機を回避すること、責任を全うすること、義務感を感じていることをやり遂げることに重点を置く
  • 批判を避けることに動機づけられる
  • あそこに危険が潜んでいて、ここはこう気をつけて事を進めるべきだ、という感覚が力をひきだしてくれる
  • 過大な信頼を寄せられたり、大げさな称賛をされたりするとかえってやる気が下がってしまうことがある
  • チャンスであっても一歩引いて考えるし、往々にして現状維持することに注意を向けている
  • やり始めたことは最後までやろうとする
  • 最初から時間を多めに見積もり、期限までに仕事を完了できるようにする
  • 分析的、個別的、具体的な議論を好む
  • スピードと正確さでは、正確さを重視する

自信

自信は目標を達成するためには必須の要素。

ここでいう自信とは、謙虚でしなやかな、静かに「私にはそれをやり遂げる力がある」と確信しているタイプのもの。

自信は、困難から目をそむけることでは得られない。

目標を達成するために乗り越えるべき障害を考えい、自分にはそれを乗り越える力があると信じて対応策を検討する人の方が、成功する可能性はかなり高い。

自己効力感

自己効力感とは、望む結果を得るために必要とされる能力が自分にはあるという確信。

自己効力感は4つの要素によって成り立っている

  1. 成功体験
  2. 他者の体験から学ぶ
  3. 他者からの保証や警告(「あなたなら必ずできるよ」「そんなことをしていてはだめだよ」というような言葉を他者からもらうこと)
  4. その時々の私たちの気分

特に最初の2つ、自分自身の成功体験や他者の体験によって培った自信が大きい。

すべてのタイプに共通する処方箋

第一段階:証明マインドセットを持っていたら、それを成長マインドセットに変える。

第二段階:必要なスキルを身につける。スキルとともに自信もつけるようにしましょう。
スキルも自信もついたと思ったら次の第三段階に進みましょう。

第三段階:それぞれのフォーカスを理解して、それにあったやり方でさらなる成長を目指しましょう。

第一段階:証明マインドセットから成長マインドセットへ

証明マインドセットを持っているがゆえに起きる不安感、拒絶されることへの恐れ、自分を守ろうとして築く壁は私たちの学ぶ力を阻害する。

◆自分のマインドセットを成長マインドセットにシフトする

①目標を考えるときには「成長」を意識したものにする 

まずはいつも自分がこうしたいと思っていることを書き出してみましょう。

その後で、下記のような成長を意識させる言葉(成長のトリガーワード)に言い換えます。

  • 学び
  • 改善
  • 発展
  • 成長
  • 前進
  • 将来的に

①私はよきリーダーになりたい。

 →私はよきリーダーになるために必要なことを学びたい。

②時間配分をうまくしたい。

 →時間配分を上手にこなせるようなスキルを身につけたい。

③体によいものを食べ運動を定期的にしたい。

 →食生活と生活習慣を改善していきたい。

④よい人間関係の中に身を置きたい。

 →よい人間関係を持つために必要なスキルを学びたい。

②if-thenプランニングをする

「こうなったらこれをする」とあらかじめ決めておくのが、if-thenプランニングです。

「人に認められたい、人から褒められたいと思って目標を決めてしまっている時には、この目標を達成することがいかに自分を成長させてくれるかという観点から考えるようにしよう」

③期待値を変えてみる

能力があれば何でもすぐにうまくいくという考えを捨てましょう。困難や難題にぶつかったときには逃げたり手っ取り早く解決しようとしたりするのではなく、腰を据えてじっくりと取り組むことが必要だと考えましょう。

ときには人の力を借りることも必要です。

④他の人と比べない

くらべるのは、他人ではありません。

昨日の自分と今日の自分であるべきです。

⑤根気よく続ける

気がついたときに自分のマインドセットを変えることをしていけば、そのうちにそれが自然にできるようになっていきます。

◆他人のマインドセットを成長マインドセットにシフトする

①ゴールとプロセスを成長マインドセットを使って設定する

他人に動いてもらいたいときに意識して成長のトリガーワードを使うことで、その場の雰囲気を成長マインドセットに変えていくことができます。

<成長のトリガーワード>

  • 学び
  • 改善
  • 発展
  • 成長
  • 前進
  • 将来的に

②ミスをしても大丈夫だと伝える。

ミスは当然起きるものだと伝えます。

さらに一歩進んで、ミスが1つも起きないなんてありえないと伝えてもいいくらいです。

人間は失敗しても大丈夫だと思うと、実際に失敗を犯す確率はとても低くなるのです。

③成長マインドセットのロールモデルを示す

成長マインドセットのよき見本になるような人がいれば、彼らがやってきたことだけでなく、その達成とマインドセットがどう関係しているかを話してあげましょう。

ロールモデルは、成功するために一歩一歩前進していくことの大切さを教えてくれるはずです。

④正しいフィードバックをする

批判であれ、承認であれ、正しいフィードバックをするためには次のような3つのルールがあります。

  1. 物事があまり好ましくない方向に進んでいる時には、それを正直に伝えましょう
  2. 物事がうまくいかないときでも自分を信じることを教えましょう
  3. たとえうまくいっていても能力を褒めるのは避けるべきです

褒めるのは、その人がコントロールできるものにすべきです。能力ではなく、やり方や工夫、粘り強さ、ポジティブな態度を認めていくのです。

ただし、うまくいかなかったときに努力を認めるのは避けましょう。こんなときには何が足りなかったのかを伝えるなど、ただ事実を伝えるだけでよいのです。

他人と比べるのではなく自分と比べることも大切です。

第二段階:必要なスキルと自信を身につける

獲得フォーカスを持つ人たちはオンザジョブトレーニング(OJT)を好みます。

いろいろなことを体験しながら成長していくのが性に合っています。

回避フォーカスを持っている人は、実際に取り掛かる前に入念な準備が必要です。

どんな仕事なのかをよく説明してあげるとよいでしょう。

成功の原因を「コントロール可能要因」に求めましょう。

「コントロール不可能要因」とは「優秀だったから」「才能があるから」「センスが良かったから」「ラッキーだったから」「あの人がいてくれたから」などです。

「コントロール可能要因」とは「準備をしっかりした」「頑張った」「うまくいくように計画を立てた」「あきらめなかった」などです。

第三段階:力を発揮する場を作る

<獲得フォーカスの人が力を発揮する場を作るには>

  1. よく褒めてポジティブで楽観的な環境を整える
  2. 目標をはっきりと持たせる
  3. アイデアを自由に出させる
  4. 彼らは何でも早く片づけたいと思っていることを忘れない
  5. 大きな絵を描く(その決断によって、どれほど可能性が広がるのかをしっかり話す)
  6. 決断する時にはプラス面を考えさせる

<回避フォーカスの人が力を発揮する場を作るには>

  1. 建設的な批判と悲観主義でアプローチする
  2. 何を得るかより何を避けるべきかをはっきりさせる
  3. 出されたアイデアを分析し、評価してもらう
  4. じっくりと仕事に取り組めるようにする
  5. 具体的な指示を与える
  6. 決断する時にはマイナス面を考えさせる

「やる気が上がる8つのスイッチ」を読んで

成長マインドセットと自信を持ち、フォーカスに合わせたスキルの習得方法と力を発揮する場が必要であることが分かりました。

まずは、成長マインドセットを手に入れることから頑張りたいと思います。

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